湖から続く路

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中禅寺湖畔にある旧イタリア大使館別荘(レーモンド1928)には行ってみたいと思っていた。天気が崩れ始めて霧に煙る湖畔は標高1270mの寒さだった。水に腰まで浸かって魚を釣る人たちに寂寥感が漂っていた。ヒメマス、ニジマス、ヤシオマス、名物としてレストランでも供されているが2012年以降ワカサギ以外の魚の持ち帰りは禁止されているそうだ(wikipediaによる)。原因が悲しい。写真は別荘へヨットでアクセスするための桟橋から。ランドスケープにしっくりと溶け込んでいる。

杜の中の黄金

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東照宮。色鮮やかで細やかな彫り物には鳥もたくさん描かれていた。杜に連なる甍の波に幾分青味がかった金色がよく似合っている。境内に飲料の自動販売機が置かれてしまうところがさすがの観光貧国だ。露出されている商品がすべて同一の茶飲料になっているからいいというものではない。とは言え階段に疲れた観光客には歓迎されていた。

1617年

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1617年建立の東照宮。最後に来たのがあまりに若い時だったために猿と猫と金箔だけが華厳の滝と共に摺りこまれてもうそれで充分だと思い続けていた。場所全体の存在感は記憶の中にまったく残っていなかったので空間体験は新鮮だった。何百人の団体行動中に見えるものは限られているし、人の成長と共に空間・建築の捉え方も変化していく。雨上がりの杜の中の時間を愉しんでいると、まわりを飛び交う知らない言葉をうるさく感じなかった。

1893年

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1893年開業の金谷ホテル。東照宮、二荒山神社等のある山と大谷川を挟んで向かい合う高台というロケーションがいい。新緑が芽吹いている中にソメイヨシノやヤシオツツジの淡いピンクが点在している。一時間ほどの建築ツアにも参加して見どころを聴いた。木造一部大谷石造の本館の1階部分は1936年に地下を掘り下げて増築されたものだそう。横文字の館名板は開業当時のもの。ロビーに展示されている宿泊記録の中にライトとレーモンドがあったのはうれしい。随所に顔を出す自慢話はホテルマンの仕事場への愛情の証だ。結婚式、ピアノコンサートなど地元に愛されていることが分かる。永い時間を経た空間をこうして使い続けて行くことの大切さを感じた。

253系

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日光はおそらく最後に行ったのは小学生のころのはずだからなんと50年振り。十数年前に那須の国立公園内にホテルを設計していた時に日光市内の公園事務所を訪れたことはあるがただ仕事だった。金谷ホテルなら泊まってみてもいいなと思ったのがきっかけ。列車は浅草発ではなく新宿発の「日光」を選んだ。JRから東武鉄道に乗り入れるので特急券込みで\4,000と割高なのだがえきねっとのトクだ値だと\2,400。車輌は以前のNEXで使われていた253系でオリジナル彩色。栗橋で東北本線から東武線に乗り入れる時に架線のない「デッドセクション」を通過するのが乗鉄には重要。一瞬だが非常用照明が点灯する。終点の東武日光駅の200m東にあるJRの日光駅は写真のような趣。莫大な設備投資をして他社線を走った挙句に肝心の駅舎をスキップせざるを得ないJR社は無念だろう。

日光逍遥

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日光で出会ったカワガラスが出たついでに4月中旬の日光ぶらぶらから先ずは鳥。雨上がりに鶯が囀る森の端に姿を現したこの鳥の名前はわからない。

河烏

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photo by kay

ウミガラスが出たついでに日光で出会ったカワガラス。流れの速い大谷川(ダイヤガワ)に飛び込んでいるところを連れが見つけた。よく観ると親が餌を取って仔にやっている。岩に糞の跡がいっぱいあるからここらが文字どおり島なのだろう。ここに写っているのは仔で親はもう少し色がはっきりしていてイソヒヨドリの雄と似ている。カワガラスPasseriformes cinclidaeスズメ目カワガラス科。brown dipper。

海烏

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エトピリカと同じ科で同じ水槽?にいるウミガラスは小ぶりのペンギンといった容姿。エトピリカよりもっと俊敏だ。動きが速すぎるので動画に撮ってスクリーンショットして拡大。ウミガラスCharadriiformes alcidae uriaチドリ目・ウミスズメ科。common murre。

花魁鳥

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ペンギンは飛べないから囲いだけでいいがエトピリカはそうはいかないので水族館ではガラス越しにしか写真が撮れない。からだの割に大きな黄色い嘴がかわいい。動きも早いしボケボケ写真だ。エトピリカCharadriiformes alcidae fraterculaチドリ目ウミスズメ科。tufted puffin。

人鳥

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水族館で一番愛嬌があるのはペンギンだろう。人鳥という和名はさすがだ。ペンギンと言えば高橋留美子「Pの悲劇」。あんな風に一緒に暮らせると楽しいだろうなあ。「管理人さん」もそうだが彼女の描く女性の容姿は好きだが性格は厄介だ。ペンギンSphenisciformes spheniscidaeペンギン目ペンギン科。penguin。

兵児鮎

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自然界に常識はない。泳ぐというよりは漂っているヘコアユは絵になってはいるが魚という感じはしない。下の方が頭だそうだ。ヘコアユAeoliscus strigatusトゲウオ目ヨウジウオ亜目ヘコアユ科。Razorfish。

魴鮄

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ホウボウが旨い魚なのはわかっていたが鰭がこんなに鮮やかな青だとは知らなかった。わかりやすい英名が付いている。表面が固いから隣にいる魚のような保護色である必要がないのだろう。海底に這いつくばっているので海に沈殿する有害物質をより多く蓄積しているはずだから産地には要注意。ホウボウChelidonichthys spinosusカサゴ目ホウボウ科。sea robin。

海月

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ネコが出た勢いで葛西水族館へ。今年の日大生産工学部卒制の2等は「人生をリセットする探索と思考の」水族館だった。指導担当でもない非常勤の私にエスキスを仰ぐ熱心な学生にこちらも本気で意見を言ったのだが、深い確信を持っているのでほとんど言うことは聞かない(笑)。TEMILという広告代理店が考えそうな館名も変わらなかった。私は全力を挙げて推したけれど砂漠にコンテクストを断ち切って計画された「かたち」に負けた。その水族館にも無数のクラゲが漂っていた。クラゲが造り出す映像は神秘的で美しい。クラゲCnidaria刺胞動物門。jellyfish。

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臨海公園にはネコもいた。森には棲まないだろうから屋台が出ていたせいなのかもしれない。この勝手気ままな敏捷な哺乳類が森に棲息していたらと想像すると楽しい。ツグミが樹の下をちょこちょこ歩いたりはしなくなるだろう。ネコはともかくキツネやタヌキの類はここの森にいるのだろうか。イエネコFelis silvestris catus食肉目ネコ科ネコ属。cat。

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鳥類園を取り巻く森の中で花木が多いところには鳥の種類が多いようで「鳥おじさん」がたくさんいた。源兵衛川でいろいろ教えてもらったことが頭をかすめて「何がいるんですか?」とおそるおそる聞いてみたら「鳥だよ」と返されてしまった。彼らは見向きしないツグミが歩いている姿も私たちには楽しい。胸を反らし気味にする姿にはツグミの矜持を感じる。ハト、スズメ、カラスについ「なんだ〇〇〇か」は止めよう、と思う。ツグミTurdus eunomusスズメ目ツグミ科ツグミ属。dusky thrush。

蒼鷺

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青みがかった灰色は鳥の名では「アオ」になる。アオアシシギもこのアオサギも名前ほどに青くはない。11日の水族館ドームの遠景写真の右手前の青い叢に写っているアオサギはほとんどシラサギのように見える。植物の「アオ」は緑だから日本語は不思議だ。ちなみに現代の中国語では、「青」という字は「緑」と同義語になることが多いそうだ。アオアシシギにバッテリーを消費仕切ってスペアに変えたらなんと未充電だった。連れがコンデジのバッテリーを融通してくれて犬智慧にならずに済んだ。ありがとう。アオサギArdea cinereaペリカン目サギ科アオサギ属。grey heron。

鶺鴒

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臨海公園、海浜公園にも「鳥おじさん」がたくさんいた。三脚に望遠レンズの本格派が例外なく男一人なのがおもしろい。顔見知りも少なくないようだし連日通っている人も多いようだ。リタイア後の時間の使い方の一つとして定着しているのだろう。青春18きっぷ旅もそうだったなあ。同年輩のカップル2,3組は一眼レフどまり、望遠レンズを抱えた「鳥おばさん」をやっと見つけたけれど三脚はなしなど、つまらないことに関心が行っているのに苦笑。こちらはたかだかコンデジだけれどセキレイの背景に枯茶色を選んで写真として仕上げることができる。ハクセキレイMotacilla alba lugensスズメ目セキレイ科セキレイ属。white wagtail。

中鷺

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アオアシシギに夢中になっているとシラサギが葦の陰から姿を現した。シラサギは白い鷺の総称で大きさでダイサギ、チュウサギ、コサギと区別するらしいがなんだかつまらない。これはチュウサギだろうか。葦の枯茶色に純白が美しい。そうしているうちに鳥類同好会の学生グループがやってきた。先輩が早速コチドリを見つけて後輩に教えているのだがどう眼を凝らしても私より鳥類発見能力が高い連れにも発見できなかった。悔しい。スズメより少し大きい程度だからこの距離では確かに難しい。チュウサギArdea intermediaペリカン目サギ科アオサギ属。intermediate egret。

青足鷸

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鳥類園の池は水辺まで樹木が茂っていてところどころにある観察舎や観察壁の小窓から鳥を眺めるしくみになっている。一羽もいないように見えていても人によっては何羽も見えていたりするから面白い。汽水池を俊敏に駆け回って漁猟している4羽のハト大の鳥も連れに教えられてやっと見えた。初めて出会うアオアシシギだ。不思議なもので一度見えると見失うことはない。4羽の動きにそれぞれ個性があるのも面白くて夢中で何枚もシャッターを切った。小値賀で撮った鳥はシギの類に違いないと確信した。アオアシシギTringa nebulariaチドリ目シギ科クサシギ属。greenshank。

葛西鳥類園

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2月に駆け足で通り過ぎた葛西臨海公園「鳥類園」に行ってみた。淡水池のほかに海水と淡水が混ざった汽水池があってその先は海水だから生態系が多様なのだろう。鳥の世界の向こうに谷口さんのドームがしっくりおさまっている。「汽水」というのは馴染の薄い言葉だ。英語ではbrackish。「汽」は「水気を帯びた」という意味を含んでいるそうだ。

花水際

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はなみぎわ、いい響きだ。川面に散って水際に漂い着いた花のうたかたの姿を今年の桜シリーズの締めにしよう。儚い樹の影も気に入っている。わたしたちの四季に感謝。

花鳥

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なんといっても花には鳥だ。満開の少し手前くらいの花には鳥が群がって蜜を吸っている。手前にある花や枝が焦点合わせの邪魔をするのでうまく撮るのには根気が必要。この日の新宿御苑の桜はヒヨドリがほとんど。しなやかに伸びるからだが美しい。水辺ではゴイサギとカワウに出会えた。そう言えば今度の朝ドラのヒロインはスズメ(鈴愛)だ。

花吹雪

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桜の花が舞い落ちるようすを写真に捉えるのは手持ちカメラではむつかしい。小石川植物園で太い桜の木の樹皮を背景にしてなんとかこんな写真が残った。桜はらはらと言えば高校生のころだったかに観ていたく刺激を受けた吉田喜重の「秋津温泉」を思い出す。舞台となっているのは岡山県北部の奥津温泉。少し北に10km行くと地理でウランが採れると覚えさせられた人形峠がある。この鳥取県との県境がこんなに北よりだったとは。東40kmのところの西粟倉は映画「おだやかな革命」で取り上げられていた間伐材の村だ。行きたいところがたくさんあるな。

小石川植物園

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スタッフの妹さんがfbにアップした木の実たくさんの写真に惹かれて初めての小石川植物園。園内にかなりの高低差があって植生の幅が広いのがいい。桜もちょうど散り頃でいい時間を過ごした。帰りに寄った「シチリア屋」はシェフがミラッツォで修行した本格派家庭料理。1年前の旅の思い出が鮮やかによみがえった。

古櫻

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lunetteの裏の少し高くなったところは昔「十二社」という地名だったところで、今も細い路が多く猫もたくさん棲んでいる。そのはずれにある小さな公園にはかなり年季の入った櫻の大木があって花がみごとなうえ人はほとんどいないので独り花見の穴場だ。満開になった後少し風が出てはらはらと散り始めた昼に近くのサラダ屋で仕入れたランチを楽しんだ。花吹雪が感動的だったので珍しくスマホ動画を撮ってみた。花びらが何枚もロメインレタスにからんだ。

桜桜

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東急東横線の中目黒駅上りプラットフォーム最前部から撮った目黒川の桜。下界は歩くのに難渋するほどの大賑わいだがここからは咲き誇る花の中心に近いアイレベルで純粋に愛でることができる。ベンチもあって呑めないことはないがみんなスマホをかざしているだけ。警備員の声がけはうるさい。

桜舟

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大学の設計演習課題の敷地を東京の水系沿いから選ぶことにしようと思いついて過日の教室会議で承認を得た。第3クォーターの課題なのだが敷地候補の下見を兼ねて「お花見クルーズ」に参加してみた。日本橋の袂から乗船してうっとおしい高速道路の下を抜けて少し進んで隅田川を下って東に折れると桜の名所大横川。ここからは和船も漕ぎ出ている。常日頃と違った視点から眺める桜を堪能した。都市もいつもとは違う視点で捉えてみると新しい展開が生まれやすいに違いない。

花筏

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今年は桜がいつもよりも少し早く開いて冷え込みもほとんどなかったから花見にはよかった。満開もいいが散り始めてからのはらはらした風情がまた桜らしくていい。日本橋の高速道路脇にも桜があって船着き場には花筏。粋な呼び名だなあ。

夏至光遥拝ギャラリー

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杉本博司の写真作品は「夏至光遥拝ギャラリー」に置かれている。水平線を撮った写真7点。大谷石の壁に沿う100mの長さのリニアな空間と江之浦の自然を仕切っているのは枠もなく自立しているガラスだけ。両端にある扉も、ガラスの手摺も実にスマートにおさめられていて自律的にただそこに在る。写真の水平線の連続の先には相模湾の水平線が在る。江之浦測候所での豊かな時間には建築とは何かという自らへの問いがしつこく付きまとっていた。なにはともあれ杉本さんの英断に敬服。

石室

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コルテン鋼の「花道」が円形劇場を突き抜ける脇にふっと出現する石室のような空間は好きだ。「花道」に正対する壁に全身が写る鏡面が在って手前直ぐの天井には正方形の明り取りが穿たれている。二人でいればここでツーショットを撮るのが成行きだ。異なる時空に自分たちがいるかのような映像が残る。おもしろい。

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木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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